北海道大学山スキー部と山岳部の2年生のための特別な雪崩講習会
オミクロン株の感染拡大が治まらず2月5、6日に北大手稲パラダイスヒュッテで開催を予定していた雪崩事故防止研究会ASSH主催の第31回雪崩事故防止セミナーを中止した。このセミナーの申し込み者は、学生と消防士がほとんどだった。春休みになると学生たちは山へ出かけ、雪崩の危険にさらされる。入学以来クラブ活動が停止され、山へ行くことがままならない2年生。山岳部3名、山スキー部3名、計6名の2年生のためだけの特別な講習会を開催した。講師は雪崩事故防止研究会の有志4名と山スキー部OB1名、北大低温研の研究者2名。全員が抗原検査をして陰性を確認。2月5日早朝、北大手稲パラダイスヒュッテに集合した。
山岳部の3人は新品のマムート・バリーボックスだ。
「自分で買ったの?」
「学生支援課が10台を買ってくれ、10日ほど前に受け取りました」
雪崩トランシーバーを北大が買ってくれるようになったのは嬉しい話だが、バリーボックスSだったらもっと良かったのだけれど。
「練習はやったの?」
「きょうが初めてです」
山岳部員たちには、丁寧に基本を教える必要がありそうだ。
「プローブを出して下さい」
「・・・・」
ひとり、プローブを連結できない2年生がいた。
「それ、壊れているよ。来る前に点検しなかったの?」
「いま、初めてケースから出しました」
大丈夫か、山岳部の2年生。
昨年、上川岳雪崩事故を起こし2名が埋没したが、コンパニオンレスキューで生存救出できた山スキー部。山スキー部の2年生たちはよく訓練され、基礎ができていた。去年は2年生のレベルの低さに苦言を言ったのだが、格段の進歩を遂げていた。
初日、土曜日の午後から大雪。朝までに積雪が60㌢を超えた。日曜日は降りしきる雪の中でシャベルコンプレッションテストと積雪断面観察を行った。指導した低温研の下山宏助教の感想だ。
「学生が雪のことを意外に知らないので驚きました。雪質をルーペで見る。観察したら記録を取る。これを山でやって欲しい」
講習会の仕上げは、シナリオトレーニング。山岳部は初級のシナリオを、山スキー部は中級のシナリオを2回練習。最後に山岳部と山スキー部が連携して捜索救助するシナリオトレーニングで締めくくった。
山スキー部(スキー部)は創部110年。山岳部は創部95年。95年間に雪崩で亡くなった学生が17名もいる。山スキー部の雪崩死者は5名。二つのクラブで22名もの学生たちが、雪崩で死んでいる。あまりにも死者が多すぎる。
23人目の死者を出さない。それは、部員とOBの責任だと私は思っている。